2016年06月26日

良く使われる打ち込みの技

今回は、DTMやそれ以前から良く使われる定番とも言える方法を、つらつらと
書いて行きましょうかね。特にネタもない事ですし…。

(長いです。ご注意下さい。)

■疑似ディレイ
これと次に挙げる「疑似デチューン」は、古くはファミコン時代から使われて
来た技です。
初期のDTM音源はシステムエフェクトがリバーブとコーラスのみで、ディレイが
付いていませんでした。そこで、ディレイが欲しい部分では擬似的にそれっぽく
聴かせる為に使われたのが、疑似ディレイです。

やり方は単純で、ディレイをかけたい部分をシーケンサ上で他のトラックへと
コピーし、徐々に音量を絞りながら適宜繰り返すというもの。ワンフレーズの
ディレイなら、1トラック内で処理できます。
音色によって聞こえ方が変わってしまうので、音量を絞って行く時はベロシティ
ではなく、CC#7:Volume や CC#11:Expression を使うと良いです。
欠点は、ディレイ成分を増やすとその分MIDI ch.を圧迫する点。また、比較的
最近の音源なら気にする事はありませんが、DTMが一般に広がり始めた頃は
最大同時発音数が24~32音という音源が多かったので、発音数も圧迫しました。


■疑似デチューン
これも昔から良く使われた技法です。
デチューンをかけたいパートを他のトラックに複製し、片方だけわずかにピッチを
ずらして2パートで同時に演奏させる事によって、コーラス効果を持たせるという
ものです。

演奏中にピッチベンドが含まれていなければ簡単にピッチベンドでずらしても
良いし、ピッチベンドが含まれる場合はファインチューンを使ってずらします。
個人的には、疑似デチューンというとファミコン時代のコナミサウンドを思い
浮かべます。
これもMIDI ch.と発音数を圧迫するので、古い音源では注意が必要です。

※これをなぜ「疑似」デチューンと呼ぶのか
元々デチューンというのは昔のアナログシンセサイザ等に搭載されていたもので、
当時は2つあるVCOの片方だけチューニングをずらす方法で単音でもデチューン
が使えましたが、PCM音源ではそもそもVCOという概念がないので、2パート
使って片方のピッチをずらす事でデチューン効果を得ています。だから「疑似」
なのです。
でも2音鳴らして片方のピッチをずらすという点では疑似でも何でもないので、
別に「疑似」でなくても良いです(笑)。


■疑似フランジャー
フランジャーをかけたいパートを他のトラックに複製し、2パートで同じ音色・
同じ演奏をさせると、わずかな発音タイミングのずれでフランジ効果を生み出し
ます。但し、音色によっては位相が打ち消しあって急に音量が引っ込んだり、
倍音だけが聞こえたりする場合もあります。
これもMIDI ch.と発音数を圧迫するので、古い音源では注意が必要です。


■ピッチベンドで音色変化
通常、音色のエディットと言えばADSR(Attack,Decay,Sustain,Release)と
フィルタ・レゾナンスですが、この方法ではそれらを使った変化とはまた違った
音色を作り出す事が出来ます。

方法は簡単で、パートのノート#を1オクターブ下げ、その分をベンドレンジ±12に
設定したピッチベンドで上げる(+8,191)方法です。
もちろん逆にノート#を1オクターブ上げ、ピッチベンドで下げる(-8,192)方法も
あり、どちらも元の音とは少し違った変化を得る事が出来ます。
但しこの方法は音を波形で鳴らしているPCM音源限定であり、オシレータの発振
周波数自体が音程になるアナログ系の音源では変化を得られない場合があります。

※この技については、別記事で詳しく解説しています。


■音色別の打ち込み作法
DTMは、現実ではありえない演奏が容易に出来てしまうという点があります。
これを利点とするか欠点とするかは打ち込む人次第ですが、やはり実在する
生楽器の音色を使うのであれば、奏法も実際の楽器に合わせた方がそれらしく
なります。


まず生楽器らしい打ち込みをする上で重要なのはベロシティです。最終的な仕上がり
はベロシティで左右されると言っても過言ではありません。
ダンス系ならベタ打ちもアリですが、人間が生楽器を演奏した場合、ほぼ無段階と
言えるほどの強弱が付きます。逆に、ずっと同じ強さで演奏しろという方が無理です。
大袈裟では?と思うくらいベロシティを付けた方が、かえってそれらしく聞こえます
が、だからといってデタラメに強弱させても下手な演奏にしか聞こえなくなってしまう
ので、強弱を付ける場所の見極めも必要です。
ハープシコード・オルガン・アナログシンセでの演奏(を想定したパート)については、
元々これらの楽器は鍵盤の強弱で音量がほとんど変化しないので、ベタ打ちでも
構いませんが、「絶対に強弱を付けてはいけない」という訳ではないので、曲の中で
邪魔になるようならベロシティを下げるのもアリです。


また、案外軽視されがちなのがゲートタイムです。ゲートタイムとは「音が鳴って
いる時間」の事ですが、曲の「ノリ」はゲートタイムにかなり左右されます。
ただの8分音符でも、スタッカートなのか半分くらい鳴らすのか、8分音符ぶんフルに
鳴らすのかによって、だいぶ聞こえ方が変わって来ます。
もちろん演奏する曲次第ですが、「もっとベース短く切った方がノリが良いのに…」
「もっとレガート気味の方がゆったりして良いのに…」と思う演奏を良く見かけます。
ベロシティ同様、ゲートタイムも気が済むまで何度も試行錯誤しましょう。

金管・木管楽器等は、鳴らしっぱなしにしない様に気を付けます。所々に小休止を
適宜入れてやる事で「息継ぎ」感が出せます。演奏を聴きながら鳴っている間息を
フーッと吐いてみて、息が切れそうになる前あたりに小休止を入れましょう。

擦弦・金管・木管は、発音してから鳴らしっぱなしにせず、モジュレーションで
ビブラートを調整したり CC#11:Expression で細かく音量を上下させる事で、弦を
弾く強さ・息の強さを逐一変えると本物らしくなります。


生楽器の打ち込みはこれらを大前提として、以下楽器別に特徴などを踏まえて簡単に
書いてみます。


■ピアノ・エレクトリックピアノ
人間の指は長さがバラバラなので、和音をジャーンと弾いても、全ての音符が同じ
タイミングに揃う事はまずありません。当然、左手と右手でも僅かなずれがあります。
このずれは重要な要素です。譜面上では同じ場所にある音符でも、それぞれを微妙に
ずらす事で本物らしくなります。
また、音色がモノラルかステレオかによっても聞こえ方が大きく変わって来るので、
左右に広げたいのか、一点で鳴らしたいのかによって音色を選びましょう。

■クラビ
これはキーボーディスト・氏家さんの受け売りですが(笑)。クラビはスタッカート
気味に、左手の低音と右手の和音をパラディドルで弾くとリズミカルになります。
※パラディドルとは:ドラムを演奏する上での基礎テクニック(ルーディメント)のひとつで、
パラ(RL または LR)とディドル(RR または LL)を組み合わせたRLRRLRLLがパラディドルです。
ダブルパラディドル(RLRLRR LRLRLL)やトリプルパラディドル(RLRLRLRR LRLRLRLL)なども
あります(R:右手 L:左手)。


■クロマチック・パーカッション
いわゆる鉄琴や木琴の類ですが、特にグロッケン・シロフォン・チューブラベルは
倍音が強烈なので、他の楽器と当たらないようにしましょう。
88Proにはローターを回したビブラフォンの音色がありません。ローター感を出す
にはSysEx:■MOD LFO1 TVA DEPTH を使って音量を揺らすとそれらしくなります。
間違ってもモジュレーションで音程を揺らしてはいけません。気持ち悪いです(笑)。

■オルガン
オルガンは前述の通りベタ打ちでも構いません。モジュレーションでビブラートを
軽くかけっぱなしにしたりしても良いでしょう。
ロック系ではグリッサンドを多用するとそれらしくなります。グリッサンドは弾き
始めで上がる時や、フレーズ終わりで下がる時があります。2オクターブくらいを
目安にすると良いでしょう。
チャーチ・オルガンはリバーブを深めにするとそれらしくなりますが、音の分離が
悪くなるほど掛けると何を弾いているのか分からなくなります。

■ギター
ギターは弦が平行に並んでいるので、和音でも同じタイミングでは鳴りません。
高音弦→低音弦、低音弦→高音弦など、ストロークによって発音タイミングを
ずらすと良いでしょう。
またビブラートはモジュレーションではなく、ピッチベンドで+方向に上げると
それっぽくなります(T-SQUAREの安藤まさひろ氏、THE ALFEEの高見沢 俊彦氏の
ように、ビブラートにアームを多用するギタリストももちろん居ます。その場合は
モジュレーションでも可)。
ハンマリング、プリング、チョーキング、タッピング、アーミングなど、
ピッチベンドを多用するパートですが、あまり離れた音にピッチベンドで移動
すると、上の■ピッチベンドで音色変化 の項目で書いた通り音が大きく変化して
しまうので注意しましょう。
EFXで歪ませる場合は、カットオフ周波数を少し下げた方が聴きやすいです。

■ベース
リバーブをかけ過ぎると全体的にモコモコした印象になるので、薄めにしましょう。
但しフレットレスベースのソロなどはあえてリバーブ深めの方が叙情的になります。
リズムの合間に極端にゲートタイムの短い音符を入れてゴーストノートを作ってやる
と、リズム感が増します。

■ストリングス/オーケストラ
いわゆる弦楽器系やChoir系ですが、曲の後ろで和音を弾くいわゆる「壁」の場合
コーラスを深めにしたり、和音を左右で分散させる(4和音なら左右2音ずつなど)と
広がり感を出せます。
ヴァイオリン等の弦楽器は「フレットレス」なので、ある音からある音へ無段階に
スッと移動する事がありますが、これをピッチベンドで再現した時に音が離れすぎて
いると、例によって音の聞こえ方が変わってしまうので注意が必要です。
ソロのヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・コンバスの場合は、音ごとに細かくアタック
タイムを変更する事で弓の速度や上げ弓(アップボウ、押し弓)・下げ弓(ダウンボウ・
引き弓)を表現出来ます。

ハープは發弦楽器ですが、鳴っている音を指で抑えて止める事も多いので、リリース
タイムを少し余韻が残るくらいまで短くし、伸ばす音はゲートタイムを長くする事で
対応し、グリッサンドは曲のキーに合わせたダイアトニックで行うと良いです。
ティンパニは、通常奏者の周りに4~6台並べて演奏するので、クロマチックで縦横無尽に
演奏出来る訳ではありません。音程を変える場合はペダルの踏み込み量で変えますが、
叩いてからペダルを踏み込むような奏法もあります(年代によっては「トムとジェリーで
お尻を蹴飛ばす時の音」と言うと分かりやすいかも(笑)。
ティンパニはベロシティを大袈裟に付けましょう。特にロール(小刻みに連打)しながら
クレッシェンドは、ベロシティ40あたりから127まで幅広く使うと良いでしょう。

■ブラス
シンセのブラスセクションは割と貧弱なので、場合によってはオクターブ重ねや、
トランペット・トロンボーンをユニゾンさせると良いです。
以前の記事「エクスプレッションで音色を煌びやかに」を参考にしたり、フィルタを
積極的に使って、大人しめ~派手な音を使い分けましょう。
また、長く伸ばす音とスタッカートの音でメリハリを付ける事も大切です。
ピッチベンドでシェイクアップ/ダウンさせる時は、ビブラートをOffにしましょう。

■リード
クラリネットなどは前述の「疑似デチューン」を使ってピッチ狂ってる感を出すと
吹奏楽っぽい感じが出ます。
サックスは鳴り始めを半音~全音下からピッチベンドで上げてやる(厳密に言えば、
ベンドレンジ±12の時 -683や-1366までピッチベンドを下げてから発音し、なめらかに
0へ戻す)と、独特のしゃくり上げ感が出ますが、何でもかんでもしゃくれば良いという
訳でもありません。またしゃくるポイントも重要で、低い音から高い音に移った時に、
高い音をしゃくるようにすると良いでしょう。逆は気持ち悪いです。
オーボエは他のリード楽器と比べて割と目立つので、音量バランスに注意します。
ソロの時はここぞとばかりに CC#11:Expression で音量を揺らし、感情がこもった
演奏になるようにしましょう。

■パイプ
フルートは普通のフルートと、Bank1 にビブラート込みのフルートがありますが、
結構深いビブラートがかかって目立つので、オーケストラの中で鳴らす時は注意しま
しょう。
ジャズなどで強く息を吹き込んだ時などの音は Bank 17 PC#76:Zampona Atk の
音を重ねる事で再現出来ます。グロウルやフラッターの再現は、出来なくはないの
ですが苦労する割に聞こえる音は微妙です。
尺八は一応レガート対応音色が Bank 1 にありますが、ギターのハンマリングや
プリングと同じ要領でピッチベンドで音程を変化させた方が自然に聞こえます。

■シンセリード
シンセリード系はフィルタの効きがとても良いので、壁からソロまで積極的にフィルタ・
レゾナンスを使って行きましょう。ディレイとの相性も良いです。音色名にMGとある
ものはmoog、P5はProphet5、CSはCS-80、OBはOberheim(っぽい音)です。
逆にSync系リードは弱く、ハードウェアのシンセにあるようなリアルタイムな音色の
変化が出来ないのが難点です。
ダンス系で使う場合は、和音をオクターブ重ねで鳴らさないと薄いかも知れません。

■シンセパッド
パッド系はアタックが遅く、リリースが長いものが多いので、発音タイミングを他の
トラックに対してわずかに先行させる事で、モタり解消になります。
壁として使う事が多いと思われるので、コーラスを深めにかけて左右に広げると効果的
ですが、アタックを短くすると意外とメロディ等にも使える音色が多いです。
コードの切り替わりで和音同士が重なると汚く聞こえるので、早めにノートOffしたり
リリースを少し短くするのも良いでしょう。

■シンセSFX
ベル系のかなり使える音色が揃っています。グロッケンやチューブラベル同様、倍音の
クセが強い音色があるので、その辺りに注意しましょう。
リバーブと相性が良いので深めにかけると良いですが、SysEx:■REVERB PRE-LPF の値に
よっては目立ちすぎる場合もあります。

■エスニック
トリルやトレモロ奏法の多いこれらの楽器はベロシティに注意が必要で、一定の強弱を
繰り返す(左)よりも、徐々に小さくなる様にした方(右)がそれっぽくなります。
EthnicVelocity.png
Bank8 PC#111:Er hu はピッチベンドの使い方がポイントです。1音ごとにはっきり
鳴らす所と、ピッチベンドで滑らかに音程が移行する場所でメリハリをつけましょう。

■パーカッシブ
スチールドラムは、あまり拍ごとにきっちりした演奏をさせるより、ずらして人間味
あるノリを出した方がラテンの陽気さが出ます。
打楽器はドラムセットの音と重複しているものも多いですが、ドラムセットの制約に
縛られない割と自由な演奏が出来るので、曲中で効果音的に使うと良いです。

■SFX
多用は避けましょう。意外とウケません(特に動物の鳴き声、環境音)。
但し、ギター系SFXのカッティングノイズやグリッサンドは「ここ!」という場所で
鳴らすとリアルさを出せます。

■ドラムセット
ドラムに関しては書く事が多いので、箇条書きで簡潔に。

・生ドラムをシミュレートするなら、手足が足りなくなるような演奏は避けま
 しょう。
・両手だけのフレーズではなく所々にキックを絡めたりする。
・フィルインやライドを叩いている間はHHペダルを4分や8分で鳴らす。
・フィルインは16分だけでなく、24分(1拍6連)や32分を織り交ぜるなど、単調に
 なるのを 避けるようにしましょう(かと言って、あまり曲に合わない複雑な
 フィルインにしたりすると、ドラムだけ必死に聞こえておかしいですが…)。
・チャイナシンバルは、NRPN 24:ドラム・インスト・ピッチコースで+6くらいに
 すると よりリアルでスピード感のある音になります。
・スネアやコンガなどは音程感があるので、ピッチによっては曲に干渉します。その
 場合は ピッチを合わせましょう。
・各インストゥルメントのデフォルトのパン設定は演奏に向かって聴いている側の
 配置になっているので、HHが右から聞こえて来ます。このパンを変更して演奏者
 側の配置にするのもアリです。
・ドラム全体をわずかに先行・後行させて、前ノリ・後ノリを出してみるのも良い
 方法です。


とまぁ、駆け足で音色別紹介をして来ましたが、もちろんこれが全てではありませんし
これが間違いないという訳でもありません。
一番良いのは、鳴らしたい楽器の素性を知る事です。どんな風に演奏するのか、どんな
特殊奏法があるのか、どんな鳴り方をするのか。そう言った事を知らずに作って行くと、
どこかしらおかしな演奏になっていたりします。
今の世の中、動画サイトを漁ればプロの演奏がいくらでも拝める時代ですから、これを
利用しない手はありません。その楽器の奏法や特徴を知ればDTMでの打ち込みに必ず
活かせるので、色々な楽器の奏法や特徴を覚えておくと良いでしょう。


長すぎた…疲れた…_(:3ゝ∠)_

posted by ゆう at 2016年06月26日| Comment(0) | 打ち込みテク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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