ここまでドラム・パーカッションの打ち込みに関する記事を書いてきました。
ドラムでは余り使うことのないピッチベンドですが、ベースやギター等では必ずと
言って良いほど使う重要な操作子なので、次回のベースの打ち込み記事に入る前に、
ピッチベンドに関するお話をさせていただきとうごじます。
(以下の解説では、ピッチベンドレンジが±12(1oct.)に設定されている場合を
前提にしています)
ピッチベンドは-8,192~0~+8,191の16,384段階の精度で音程を滑らかに変化
させ、半音あたりは +683 です。なので、表を作って目に付く所に貼って置くと便利
です。※但し音源によっては若干ずれる可能性があります。
半音 683
2半音 1,366 全音
3半音 2,049
4半音 2,732 三度
5半音 3,415
6半音 4,098
7半音 4,781 五度
8半音 5,464
9半音 6,147
10半音 6,829
11半音 7,512
12半音 8,191 1oct.(-8,192)
ヴァイオリンやシンセ等は滑らかに、ギターやベース等のフレットがある楽器は
ビブラートの時は滑らかに、グリッサンドの時は半音単位で変化させます。
<例1>
以下の図は、ビブラート→グリッサンドの表現です。
ギター・ベースのビブラートは、弦を押し上げる事で弦の張力を上げて音程を
変化させているので、ピッチ変化は+方向になります。元の音から半音、更に
派手なビブラートにしたかったら全音くらいまでの範囲で、音程を周期的に
+へ振ります。
ビブラートなので周期的に同じ動きをさせていますが、この波がひとつだけに
なればチョーキングになります。要するに、このビブラートはチョーキングを
何度も繰り返している、という事になります。
最後のグリッサンドは半音単位で下げていますが、ゲートタイムの範囲内に
ぴったり収めてしまうと音の切れ際が不自然になるので、わざとピッチ変化が
終わる前に発音をやめています。ゲートタイム後のピッチ変化は、リリース
タイムに任せている訳ですね。
フロイドローズなどのトレモロアームを持ったギターで、アームダウンによって
ビブラートをかけた場合はこの波形が反転したマイナス方向へのピッチ変化に
なります。
<例2>
この例は、中央値から+・-方向に振ったビブラートです。弦に対して直角では
なく平行に指を動かす、フォークやクラシックギターでのビブラートはこの様に、
やや-方向にも振れます。この場合は音程があまり大きく変化しないので、1/4~
1/2半音くらいの範囲で振れるようにしましょう。
<例3>
この例はハンマリング・オンを表現しており、C→Dに全音上がる場合を表しています。
どちらも同じ演奏ですが、①鳴っている音をピッチベンドで+1,366して上げるのか、
②ピッチベンドで-1,366下げておいて音を鳴らし0に戻すのか、の違いがあります。
どちらも聞こえ方はほとんど変わらないので、どちらを使っても構わないのですが、
①の場合は0に戻す瞬間がリリースタイムや次の音の発音タイミングに被りやすい
ので、演奏によってはリリースの途中で音が戻る所まで聞こえてしまったり、次に
鳴らす音のアタック部分が一瞬全音上から下がって来るように聞こえる場合もあり
ます。込み入ったフレーズでは次の音符がスムーズに鳴るように②を使った方が良い
ですね。
そしてプリング・オフも、例えばD→Cにプリング・オフで音程が移る場合、鳴って
いる音をピッチベンドで-1,366して下げるのか、ピッチベンドで+1,366上げておいて
音を鳴らし0に戻すのか、でハンマリングと同じ事が言えます。
スライドの場合、D→CやC→Dに移る時(つまり2フレット移動する時)、間に必ずC#の
音が入っているので、0→ +683→+1,366 や 0→ -683→ -1,366 とします
(0に戻すのであれば、+1,366→ +683→ 0 や -1,366→ -683→ 0です)。
ハンマリングやプリングはライトハンド、スライドは大きく移動する事によって
1オクターブ以上離れた音と繋ぐ事が出来るのですが、ピッチベンドで余り離れた
音程に移動するのは避けましょう。
再生速度を変更出来るプレーヤで、何でも良いのでボーカルの入った曲を再生
させてみて下さい。そして聴きながら、再生速度を倍にしたり半分にしたりする
と、声はどうなるでしょうか。
男声ボーカルを倍速すると女声のようになり、女声ボーカルを半分の速度にする
と男声のようになりますね。楽器の音源にも同じ事が言えるのです。
PCM音源は実際の音を録音(サンプリング)してデジタル信号に変換し、その信号
をROM(Read Only Memory:波形ROM)に記憶させて置き、鍵盤やMIDIからの
情報によって逐次ROMから読み出して再生しています。
しかし上記のプレーヤの例にもあるように、原音から離れれば離れるほど波形の
再生速度が変わるので、聞こえる音もどんどん原音から離れて行ってしまいます。
鍵盤で演奏する場合は、このような不自然な鳴り方にならないように、通常は
音域ごとに複数の波形が用意されています。しかしピッチベンドで音程を変える
というのは、いま現在鳴っている音程の波形の再生速度を強引に変えているだけ
なので、原音から離れるほど不自然な音になってしまいます。
シンセ系の音色はそれほど不自然にはなりませんが、ヴァイオリンやギター等は
5度を越えた辺りから明らかに不自然になって来るので、ピッチベンドの使い方
には気を付けましょう。

