2016年09月28日

エレピの打ち込み~

エレクトリック・ピアノ(エレピ)は歴史的には古く、1930年頃には既に存在
していました。当時のメカニズムはピアノ同様、鍵盤を弾くとハンマーが
トーンバーと呼ばれる鉄の棒や鉄片を叩き、その振動をピックアップ(細い
銅線を細かく巻いたコイル)で拾い、アンプに入れて増幅するのが基本的な
構造です。
代表的なのがローズ(Rhodes)やウーリッツァー(Wurlitzer)ですね。88Proの
音色では、ローズはRhodes、ウーリッツァーはWurlyとして収録されており、
GM準拠の音源ではPC#5:E.Piano 1 の音色がこれら有名なエレピの音色です。

そしてトーンバーではなく、ピアノと同じように弦をハンマーで叩き、その
音をピックアップで拾う方式を採用したのが、ヤマハのCPシリーズです。
構造的にはほぼピアノですが、ピックアップで音を拾う事でピアノとは違う、
けれど前述のローズ等とも違ったアタックが強く歯切れの良い音で一世を風靡
しました。このCP系の音色は PC#3:Piano 3 です。

やがて半導体技術が確立されると、物理的な構造を廃して電気的・電子的に音を
合成し作り出す技術が台頭して来ます。ある周波数の信号を作り出し、それに
フィルタをかけたり、出た信号をまた発振回路へ戻したりして複雑な倍音を作り
出す事で、表情豊かな音を出せるようになりました。
これが PC#6:E.Piano 2 に収録されている、通称「FMエレピ」と呼ばれるFM
音源のエレピですね。

そして現在は、データを記憶する半導体(ROM:Read Only Memory)の大容量化・
低価格化、サンプリング技術の向上で格段に高音質・高品位となり、実物の楽器
から出る音を音域別・ベロシティ別にそのままデータ化してハードウェア音源に
搭載(※)したり、ソフトウェア音源として鳴らす事が可能になった訳です。

ソフトウェア音源に至っては、各鍵盤毎に個別の波形がベロシティ別に10段階
ほど用意されているなど、本物と聞き分けが出来ないほどのクオリティを持つ
音源もあります。当然ながら、そのクオリティのぶん波形容量も半端ではなく、
少なくとも数GB、多い物では数100GBもの波形ライブラリを搭載しています。
※この手法をPCM(Pulse Code Modulation)と呼ぶのですが、実際PCM音源というのは80年頃には
既に一般市場に出回っていました。しかし、ROMが昨今のように大容量ではなかった為、あくまで
「それらしい音がする」程度のものでしかありませんでした。PCM音源で実物に近い高品位な音色
を鳴らせるようになったのは、90年後半あたりからです。88Proももちろん、PCM音源です。



実際の打ち込みについてですが、E.Piano 1/2ともベロシティに対するフィルタ
のかかりが良い為、ベロシティを幅広くメリハリを付けるのが良いでしょう。
カットオフ周波数は、+方向にはほとんど効きません。レゾナンスを上げると
やや強調されますが、音を硬くする目的では+20(84)が限界で、それ以上では
ミョンミョンしてしまいます。
もっと音を硬くしたい時は EFX 03:Enhancer をかけ、パラメータ Hi Gain の
値を上げてやると、ガツッとした音になります。
籠もらせたい時はカットオフ周波数の-方向が良く効くので、メロウな感じを
出したい時には-10~-15(54~49)ほど下げると良い感じになります。


さて、エレピと言えばこれまでにも多くの奏者によって様々なサウンドが創出
されて来た訳ですが、特に良く聴かれるものとして、トレモロやフェイザーを
かけた音があります。エレピの音が左右を往復しているのはトレモロ、シュワ
シュワした効果はフェイザーによってかけられています。

Grover Washington Jr. - Just the Two of Us

他にも名曲はあるんでしょうが、自分はこの曲がとても好きなので…(´ω`)

フェイザーについてはEFX 07:Phaser をかける訳ですが、初期値では少し浅い
ので、パラメータ Depth の値を95、Reso の値を50くらいにすると、エレピに
適した感じになるでしょう。

トレモロについては、かけ方が2通りあります。モノラルで良い場合は過去記事
各コントローラとエクスクルーシブ」で書いたように、モジュレーションのLFOで
TVAを揺らす方法と、EFX 12:Tremolo をかける方法です。この場合は中央または
そのパートで設定したPanの値の定位で、周期的に音量が上下します。
TVAを揺らす方法はサイン波での変化しか出来ませんが、EFXならば矩形波と
ノコギリ波2種が使えますね。

もうひとつは、上の動画 Just the Two of Us 出だしで聴かれるような、左右を往復
するパターンですが、Panを使って往復させる時は注意が必要です。
左右を往復させるという事は、Panの値を0⇔127で行き来させる訳ですが、細かい
音符が続くフレーズでは、発音の瞬間にその時のPanの値が即時に適用されるので
割と速く往復させても音がしっかり追従します。

ところが全音符など長く伸びる音に対してPanの値を往復させる時は、既に発音
している音を変化させなければならないので処理が重くなり、トレモロ程度の
速い変化になると音がデータの値について来られないのです。はっきり往復して
いると聞き取れる速度は1Hz(1往復/秒)くらいで、それ以上の速さになると段々
うやむやになり、コーラスをかけると尚さら定位感が薄れてしまいます。

このような時はEFXを使うと良いのですが、EFX 12:Tremolo はモノラルなので
往復させられません。そこで使うのが次の EFX 13:Auto Pan です。
Auto Pan はパートのPanの値を変えている訳ではないので、最大10Hz(10往復/秒)
まで設定出来、定位感もPanよりハッキリしています。
変化させる波形も Tremolo 同様に矩形波・サイン波・ノコギリ波2種が選べるので、
エレピのトレモロに適していますね。

フェイザーだけ?トレモロだけ?俺はどっちも同時に使いたいんじゃボケェ!

と思われる方もいらっしゃると思います。ごもっともです。そんな欲張りな方の
為に、ちゃんと EFX 54:Rhodes Multi というエフェクトが用意されています。
もう名前なんかそのまんまですね。まさにエレピならこれを使え!と言わんばかり
のEFXです。

Rhodes Multi は直列4系統20バルブDOHCツインターボ(?)のような強力なEFXで、
●エンハンサー
└Enhancer Sens/Mix
●フェイザー
└Phaser Manual/Rate/Depth/Resonance/Mix
●コーラス/フランジャー
└Chorus/Flanger Select/LPF/Pre Delay/Rate/Depth/Fb Level/Mix
●トレモロ/パン
└Tremolo/Pan Select/MOD Wave/MOD Rate/MOD Depth/Switch

が直列に入っています。シュワシュワした感じを付けるならフェイザー、より
強烈なジェット感を付けるならコーラス/フランジャーを Flangr にします。
但し Flangr にするとピークでガサガサとノイズが乗る事があるので注意が必要
です。
トレモロ/パンはステレオにするかモノラルにするかの違いなので、ステレオで
左右を往復させたい時は Select で Pan を選択しましょう。

個人的には、欲を言えば Overdrive も欲しかったかな…。


という訳で、ほとんどはエレピの遍歴とエフェクトについての解説ばかりに
なってしまいましたが、エレピは幅広いジャンルに使える便利な楽器ですので、
使い込んでみると良いでしょう。


あいあいがさ / 窪田 宏 (Copy・SC-88Pro版)



posted by ゆう at 2016年09月28日| Comment(0) | 打ち込みテク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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