発売20周年です。
まずは諸々のスペックを簡単に見て行きましょう。今となっては大した事の
ない性能ではありますが、当時はやっぱり「最強」だったのです。
※ソースは取扱説明書 p214 ■主な仕様 より
■製品名:サウンド・キャンバス SC-88Pro
(GMシステム / GSフォーマット)
●パート数:32
●最大同時発音数:64
●本体メモリ
音色マップ:3(SC-55,SC-88,SC-88Pro)
プリセット音色数:1,117
ドラム音色セット:42(3つのSFXセットを含む)
ユーザ音色数:256
ユーザドラム音色セット:2
ユーザエフェクト数:64
プリセットパッチ数:128(エフェクト付き)
ユーザパッチ数:16
●エフェクト
リバーブ(8種類)
コーラス(8種類)
ディレイ(10種類)
2バンド・イコライザ
インサーション・エフェクト(64種類)
●ディスプレイ
70.6×24.5 mm (バック照明付きLCD)
●接続端子
MIDI端子 (IN A , IN B Front , IN B Rear , OUT/THRU)
オーディオ入力端子×2 (L,R)
インプット・ボリュームつまみ
オーディオ出力端子×4 (OUTPUT-1 L/R , OUTPUT-2 L/R)
ヘッドホン端子
コンピュータ端子
コンピュータスイッチ
●その他
電源:AC100V (50/60Hz)
消費電力:16W
外形寸法:218(幅)×250(奥行)×72(高さ) mm
重量:2.6kg
●発売日:1996年10月23日
●定価:¥89,800 (税抜)
同等音源を搭載したモデルとして、パネルの液晶画面やスイッチ類を廃した
廉価版のSC-88ST Pro、32鍵盤一体型のSK-88Proなどがある。
●内蔵DAC:BurrBrown PCM69
18bit,16倍オーバーサンプリング
●波形ROM容量:40MB(うちピアノ音色4MB) 16bitリニア換算。
実質20MB (NEC uPD23C32000GX 32Mbit マスクROM ×5)。
●波形サンプル:18bit 32kHz
●海外専売モデルとして、1Uラックマウント筐体のSC-880がある。基本的な
性能は88Pro同等ながら、SC-8850にも搭載されているDAC "AKM AK4324"
(24bit・128倍オーバーサンプリング・8次特性デジタルフィルタ内蔵)を
使用しているため、88Proより若干音質が良い(内蔵波形は恐らく同一)。
尚、SC-880はラックマウント音源という位置付けなので Sound Canvas の
表記がなく、「64VOICE SYNTHESIZER MUDULE MULTI-FX」とパネルに
記載されている。
当時はまだUSB 1.0規格も登場したばかりだったので、今のシンセや音源の
ようにUSBでPCと直結などという事は到底出来ませんでした。
なので、MIDIを扱う場合はPC背面の拡張スロットにMIDIインターフェイス
(以下 MIDI I/F)を差し込むか、RS-232C という通信端子を使って MIDI で
接続し鳴らす方法が主流でした。
↑上 RS-232Cを使用したMIDI I/F MA01(カモンミュージック)
下 PC-9800シリーズ用MIDI I/F MPU-PC98II(Roland)
そしてこれらMIDI I/Fと音源モジュール、シーケンスソフト、配線類などを
ひとつのパッケージ販売としたものがRolandのミュージくん・ミュージ郎
シリーズで、DTM音源MT-32とMIDI I/Fを同梱したミュージくん(1988年
発売)のパッケージに初めてDesk Top Music System と記載された事から、
PCと音源を繋いで打ち込み・演奏させる事をDTMと呼ぶようになりました。
(PCを使って卓上で書籍・新聞を編集する事をDesk Top Publishing:DTPと
呼び、DTMはそれをもじったもの)
RS-232Cを使ったMIDI I/Fは構造が簡単で、数点のパーツだけでMIDI IN・
OUTが使えるようになるので、音源がシリアルポートと直結出来るように
なるまでの間、初期のDTMでは良く使われていました。
↑MA01内部の様子(LEDは交換してあります)。
基板に「EMU-232C」と書かれている事から、三鈴エリー製ですかね。
その後は新しい音源が出るたびに、こういったパッケージでの販売も同時に
行われ、ヤマハ・コルグ・カシオ・カワイもこれに追従しパッケージ販売を
始めた事で、一気にDTMの敷居が低くなり広まって行きました。
YAMAHA : Hello! Music! シリーズ
KORG : Audio Gallery シリーズ
CASIO : 日曜音楽 / 電送音楽シリーズ
KAWAI : Sound Palette シリーズ
自分はこういったパッケージ品が出る前は、ヤマハのシーケンサ(QX5FD)や
リズム・プログラマ(RX,RYシリーズ)、カシオのシンセサイザやキーボードを
使って打ち込みをやっていて、途中でSC-55mkIIを単品で買ったりしていた
ので、初めて買ったDTMシステムのパッケージ品は当時発売されたばかりの
「ミュージ郎300」(音源モジュール:CM-300)でした。
CM-300はほぼSC-55mkII同等の音源なので上位機種の500が欲しかったけど
お金がなかったんだよぅ(300:¥88,000 500:¥145,000)。
当時はPC一式揃えるのに何だかんだで50~60万円くらいかかっていたので、
いくら敷居が低くなったとは言えDTMはお金のかかる趣味だったのです。
一体今までにシンセや音源など、DTMにどれだけお金をつぎ込んで来たか…
考えたくない。多分中級セダンが新車で買えるくらい(笑)。でも88Proだけ
はRolandからの頂き物です。
DTM音源の歴史は88Proが最後という訳ではありません。この後もRolandは
SC-8850やSD-90、ヤマハはMU100やMU2000など、88Proをスペック的に
圧倒する音源を次々発売しました。
しかしなぜか未だにDTM音源として88Proは人気があり、オークションに
出品されると入札が相次ぎ、2~3万円の値が付きます。
それというのも、ネットに置かれている個人作成のMIDIデータは88Proで
作成したものが多いからでしょう。それだけ当時、88Proのスペックに飛び
ついた人が多かった事が窺い知れます。
個人的に一番有り難かったのは、最大同時発音数が64音になった点ですね。
それまでのDTM音源は24~32音が主流だったので、どうしても演奏の中で
オーバーする事がありました。音色によっては1音で2ボイス消費しました
からね…。
この手の音源は基本的に後着優先で鳴る為、発音数をオーバーすると鳴って
いる中で一番古く発音した音を消す、消す優先度は16chが最も高く、15~
1chと来て最も優先度が低いのは10chのドラム、という処理になっています。
そこで、メロディを16chに設定して、メロディが途切れたら他パートで鳴る
音の中から幾つか音符を削るという作業を強いられました。
各chで必要最低限の発音数を確保するパーシャルリザーブというSysExを曲の
頭で設定する儀式も必須で、SC-55mkIIの頃は24音を各chにどうやって割り
振るかで悩まされたものです。
88Proの64音になって、音が途切れたり、パーシャルリザーブが面倒という
悩みも一気に解消されました。まぁ、今では128音なんて当たり前ですが…。
ただ、言ってもやはり20年選手。現存する個体のほとんどはパネルのボタン
類が効きづらくなり、バックアップ用電池(CR2032)が消耗し、中には故障
したものも多いでしょう。Rolandさん、せめてパネルの基板だけでも再販
してもらえませんかね…。
あ、何だったらSC-880を復刻して国内で販売してもいいですよ。…なんて、
今はすでにDAWの時代。今さらこの手のハード音源など再販しても採算が
取れないですね。
そう言えば自分の88Proは、今まで一度も Battery Low が出た事ないなぁ。
PCの高性能化、メモリや記憶媒体の大容量化によって、生音を高音質で収録
したソフトウェア音源が台頭したお陰で、個人でも高音質・リアルな演奏が
出来るようになって来ました。
それらに比べるとやはり当時のDTM音源の音は確かにショボいです。ドラム
の音も88Proが出た時は「やべぇ超かっこいい…」と思ったのに、この5年後
発売のSD-90のデモを聴いた途端、88Proの音がウンコに思えたものです(笑)。
こんな音、88Proで出せる訳ない…ずるいわぁ…。
以前、SD-90の波形総容量をRolandに問い合わせましたが、教えてもらえま
せんでした。
音的にはもう時代遅れ感がプンプンしていてスーパーの店内BGMと揶揄され
ますし、オリジナル曲を作っているならまだしも今どき既製曲の耳コピなど
もう流行らないという声が多く聞かれ、もっぱら作編曲の段階でのスケッチ
程度にしか使われない時代ではありますが…手放せないんですよねぇ、88Pro。
生楽器系、特にピアノやドラム、歪みギターはもはや一線で使うには厳しい
クオリティなので他の音源と組み合わせて使っていますが、シンセ系やベル
系、アジア系のパーカッションなどは使える音色が揃っていると思います。
88Proが人気を博した理由は、やはり当時としては未曾有の1,117音色 42
ドラムセットと、64種類のインサーションエフェクトでしょう。システム・
エフェクトとしてSC-88からディレイと2バンドEQが付いたのも大きな進歩。
こういったDTM音源は基本的に出力がライン1系統だけなので、外部エフェ
クタを使って特定のパートだけに効果を掛けるという事が出来なかったの
です。なので、たった1系統とは言え、BOSSエフェクタゆずりの歪み系や
RSS(※)直系の3Dエフェクトが搭載されているのは、とても魅力的でしたね。
一応88ProはOUTPUTが1と2に分かれているので、特定のパートの出力先を
SysExでOUTPUT 2に設定し、その出力を外部でエフェクトに通し、88Proの
オーディオ入力端子に戻しOUTPUT 1のパートとミックスし出力させる、と
いう方法もありますが、手間はかかりますね。
※RSS=Roland Sound Space(3次元音響処理技術)
PCの性能向上で、88ProをソフトウェアでエミュレートしたFor iOSやVST
版のSCVAが出ているので、実機を手に入れる機会がなかった人も88Proの
音を楽しめるようになった訳ですが、若干の違いがあるようですね。
波形は同じものを使い回せるので出音はほとんど変わりませんが、EFXの
効きに違いがあるようで、特にギター系EFXでワウを閉じた時の鳴り方が、
実機と異なります。
古いデータを完全に再現したい時は、やはりソフトウェア版より実機の方が
良さそうですが、これからデータを作って行くのであれば、どちらでも同じ
ように使い込めると思います。ハード音源の方が自由度は高いので、中古で
安く出ているのを見かけたら購入してみるのも良いかと。
そうそう。88Proはシステムにバグを抱えているモデルがあるらしいですね。
具体的には Bank 44 PC#82:Cheese Saw 2 を強いベロシティで鳴らすと
Screamが一緒に鳴ってしまう、特定のMIDIファイルを鳴らすとフリーズ
してしまう、等です。
88ProがGSリセットを受信しGSモードで動作している時に、以下のXG用
NRPNを受信するとフリーズするようです。XG SYSTEM ON を受信して
いれば、フリーズは起こりません。
※このフリーズを起こすと、88Pro内に記憶されているユーザ設定が全て
吹っ飛びますのでご注意を。
■Drum EQ Treble Gain
NRPN MSB(99) : 49 (31H)
NRPN LSB(98) : 38 (26H)
DATA Entry MSB (6) : 127 (7FH)
一時期Rolandの方でも(バグとは認めないまでも)修理を受け付けていたよう
で、修正がなされたバージョンは、筐体裏面のシリアル番号などが書かれた
あたりに青やオレンジの丸いシールが貼られています。
中古で探す時は、このシールのあるものを探した方が良いかも知れませんが、
未修正のバグ持ちでもそれで特に困った事はこれまで一度もありません。
前述のCheese Saw 2の問題以外はMIDIデータの特定のCC#に起因するので、
データ側で修正すれば正常に再生出来ます。
↑我が88Proのバージョン表示。96/09/17 08:30版の初期型 Ver.1.02。
今まで色々なシンセ音源・ドラム音源を使って来ましたが、ここまで長く
使い込んだ物は他にありません。既に「そこにあって当たり前」な存在に
なっている88Proですが、良く考えてみるとやはり心底惚れ込んでいると
いうか、気に入っているんでしょうね。
もう価格分以上に使い込ませてもらっています。
それでは、最後にひとこと。
INTEGRA-7が欲しい…。
最後の最後で何もかも台無しにするスタイル。


コメントありがとうございます。
最近は古いソフトが満足に動かなくなって来ていますが、
仮想OS上で古いソフトを動かすのもひとつの手段ですね。
SCシリーズ、永く大切に使ってあげて下さい。