2017年11月08日

SC-88Proのテストモード

この所ブログに書くネタすらなくて困っておりますが、DTMerの皆様におかれましては
秋の夜長もせっせと音符の打ち込みに励んでおられる事とお慶び申し上げます。

さて、今回は88Proのテストモードについて書いてみたいと思います。

デジタル楽器の多くは、特定の操作を行う事で、サービスマンが修理の際に利用する
テストモードに入る事が出来ます。テストモードでは、液晶やパネルLEDの良否、
内部メモリやCPUとの通信状態、入出力端子の良否など、様々な項目をテストして
診断する事が可能です。

代表的な機種のテストモードについては、こちらにたくさん載っています。

※2019/06/26 追記
上記サイトは閉鎖されてしまった為、記事としてサルベージしてあります。こちら




一応テストモードを利用する際の注意点を挙げておきます。

●音量に注意
テストモード中は、通常の楽器音ではなくサイン波を出力するものがあります。
思わぬ大音量となる事があるので、アンプのボリュームは絞った状態から徐々に
上げるようにしましょう。

●メモリ内容に注意
一部の機種は、テストモード内にファクトリーセットの呼び出し機能を備えています。
ファクトリーセット呼び出しは文字通りメモリ内容や各種設定などを工場出荷状態に
戻す機能です。また、テストモードに入っただけで初期設定に戻る機種もあります
ので、必要に応じて事前にバックアップを取っておきましょう。

ユーザデータはバルクダンプ機能を使って、外部のシーケンサ等に保存して
おきます。
1:ALL ボタンを押して ALL ランプを点灯させる
2:INSTRUMENT ◀ ・ ▶ を同時押し
3:ディスプレイに Dump all, Sure? と表示される
4:シーケンサを録音、またはエクスクルーシブ受信状態にする
5:ALL ボタンを押すとバルクダンプ送信が開始される
※バルクダンプの送出対象はあくまでユーザ音色やユーザドラム、ユーザEFX等
の設定のみで、システムの設定は含まれません。


では、88Proのテストモードについて解説します。

88Proでテストモードに入るには、以下の手順を踏みます。

1:電源OFF
2:パネルのKEY SHIFT ◀ ・ ▶ボタンを押下したまま
3:電源ON
4:オープニングが表示されている間にVOLUMEつまみを押す(PREVIEW)


成功すれば、一瞬「TEST MODE」と表示されたあと、すぐに液晶画面のテストに入り、
全ドットが点灯した状態になります。

テスト項目は、

1:LCD&LED Test
2:Memory Test
3:Switch Test
4:MIDI & Battery Test
5:Serial Test
6:Sound & Effect Test
7:LSP Test

となっており、KEY SHIFT◀ を押しながらMIDI CH◀ ・ ▶を押す事で、次(前)の
テストに移ります(2:Memory Test は完了までに数秒かかるので、その結果が出る
までは他のテストに移る事が出来ません)。
5~7はオシロスコープが必要なテストの為、ここでは1~4のみ書くことにします。

■1:LCD&LED Test
テストモードに入った直後の状態です。全ドットがムラ・欠けなく点灯しているかを
チェックします。ALL/MUTEボタンを押すごとにコントラストが変わるので、同様に
ムラや欠けがないか目視でチェックします。

PREVIEWボタンを押すと、LEDが順にひとつずつ点灯し、最後に全点灯します。
PREVIEWを押すたびに順点灯するので、点灯しないLEDがないかをチェックします。
EFXインジケータのLEDのみ2色になっていて、緑→赤→橙(緑・赤の同時点灯)と
色が変化します。

TestMode1.jpg
LCD&LED Testの様子


■2:Memory Test
内部メモリの良否、通信状態などをチェックします。

メモリテストに移ると自動的にテストが開始され、数秒後に結果が表示されます。

TestMode2.jpg
Memory Testの様子

良好ならば写真のように OK と表示され、内部のいずれかのメモリ、またはメモリ
との通信状態に問題がある場合は NG と表示されます。


■3:Switch Test
発売から20年以上経つ88Proが一番引っかかりやすいのが、このテストではないで
しょうか。パネル上の、電源スイッチ以外のボタンの良否をチェックするテストです。

順番は決まっていないので、パネル上のボタンをひとつずつ押して行きます。押した
ボタンの名前が表示され、下にドットが点灯すれば、そのボタンは正常に機能している
事になります。
全てのボタンが正常であれば、 OK 表示が出ます。

スイッチの接点が劣化して接触抵抗が高くなって来ると、グイグイ押さないと
ボタンが効かなくなります。その場合は、内部のタクトスイッチを交換する
必要がありますね。

以下の記事で、タクトスイッチの交換作業を行っています。当然ですが、ある
程度はハンダ付けの技術が必要になって来ます。
SC-88Pro のタクトスイッチを全交換するよー


TestMode3.jpg
Switch Testの様子


■4:MIDI & Battery Test
メモリの設定を保持する内蔵バッテリの電圧と、MIDI端子の良否をチェックする
テストです。MIDI端子のテストをするには、MIDIケーブルが1本必要です。

TestMode4.jpg
MIDI & Battery Testの様子

テストに入った段階ですぐバッテリ電圧がチェックされ、現在の電圧と良否が表示
されます。2.8~3.5V(ボルト)でOK診断となり、範囲を外れていればNGとなります。

MIDIテストは、背面のMIDI OUT端子にMIDIケーブルを挿し込み、もう一方を、
・背面のMIDI IN Aに接続する
・背面のMIDI IN Bに接続する
・前面のMIDI IN Bに接続する
でテストします。全て良であれば、ドット部分に大きく OK 表示が出ます。

全て接続しても OK 表示が出ない場合は、MIDIケーブルの断線を疑ってケーブルを
別のものに交換して再度チェックします。それでも OK にならない場合は、いずれかの
MIDI端子が不良になっている可能性があります。



このようにして、88Proの健康診断を行う事が出来ます。
テストモードを抜けるには、一旦電源をOFFにして下さい。

まぁ実際の所、既に88ProはRolandでも修理を受け付けていないので、不良個所が
発覚した所でどうしようもないのですが😅

ですが、内蔵バッテリは頑張れば自分で交換が可能ですので、電圧チェックくらいは
定期的にやった方が良さそうですね。


■SC-88Pro 内蔵バッテリの交換について
88Proは内部が2階建てになっていて、ケースを開けた時に見える基板がデジタル側、
そのデジタル基板を外すと奥に見えるのがアナログ側の基板になっています。

内蔵メモリのバックアップ電池はデジタル側の基板に取り付けられており、デジタル側
基板を外して裏返すと、コンピュータ端子のすぐ後ろあたりにあります。

!必ずACプラグをコンセントから抜いてから作業を行ってください!
でないと感電しちゃうかもよ~。

バッテリ交換はメモリ内容が消えますので、事前にバルク送信等で必要に応じて
バックアップを取って下さい。



88ProBattery.jpg
バックアップ電池の位置
※この写真ではコンデンサが交換されていたり、コンピュータ端子が撤去されて
いて、無改造の物とは若干異なるのでご注意。


ソケットに入っているので、黄色矢印あたりに小さなマイナスドライバなどを
突っ込んで右方向に押してやると、簡単に取り出す事が出来ます
使用電池はおなじみCR2032ですので、バッテリテストで電圧が低くエラー表示が
出たら、市販のものを購入して交換しましょう。
+・-ドライバ各1本で出来る簡単なお仕事です。

基板下部から出ている配線をブチ切らないように気をつけましょう。


なお、バッテリを交換した際は念のため、内部メモリを初期化しておきましょう。
初期化の手順は、

1:電源ON
2:最下段の SELECT を押したまま
3:INSTRUMENT ◀ ・ ▶ を同時押し

するとLCDに Init all, Sure? と表示されるので、ALL ボタンを押下すれば
ファクトリーセットアップが実行され、初期状態に戻ります。



posted by ゆう at 2017年11月08日| Comment(0) | SC-88Pro | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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