ましては秋の夜長の全裸DTMに励んでおられる事とお慶び申し上げます。
デジタル楽器の多くは、特定の操作を行う事で、サービスマンが修理の際に
利用するテストモードに入る事が出来ます。テストモードでは、液晶画面や
パネルLEDの良否、内部メモリやCPUとの通信状態、入出力端子の良否など
様々な項目をテストして診断する事が可能です。
代表的な機種のテストモードについては、こちらにたくさん載っています。
※2019/06/26 追記
上記サイトは閉鎖されてしまった為、記事としてサルベージしてあります。
こちら
■テストモードを利用する際の注意点
●音量に注意
テストモード中、通常の楽器音ではなくサイン波を出力する機種があります。
思わぬ大音量となる事があるので、アンプのボリュームは絞った状態にして
おいて、徐々に上げるようにしましょう(特にヤマハ)。
●メモリ内容に注意
一部の機種は、テストモード内にファクトリーセット呼び出し機能を備えて
います。ファクトリーセット呼び出しは文字通りメモリ内容や各種設定など
を工場出荷状態に戻す機能です。また、テストモードに入っただけでも初期
設定に戻る機種もありますので、必要に応じて事前にバックアップを取って
おきましょう。
さて、では88Proのテストモードについて解説してみたいと思います。
88Proでテストモードに入るには、以下の手順を踏みます。
※MIDI端子のテストを行う予定の場合は、背面の _COMPUTER_ の所の
スイッチを予め MIDI にセットしておく必要があります。
1:電源OFF
2:パネルのKEY SHIFT ◀ ・ ▶ボタンを押下したまま
3:電源ON
4:オープニングが表示されている間にVOLUMEつまみを押す(PREVIEW)
成功すれば一瞬「TEST MODE」と表示され、すぐ液晶画面のテストに入り
全ドットが点灯した状態になります。
テスト項目は、
1:LCD&LED Test
2:Memory Test
3:Switch Test
4:MIDI & Battery Test
5:Serial Test
6:Sound & Effect Test
7:LSP Test
となっており、KEY SHIFT◀ を押しながらMIDI CH◀ ・ ▶を押す事で、
次(前)のテストに移ります(2:Memory Test は完了までに数秒かかるので、
その結果が出るまでは他のテストに移る事が出来ません)。
5は専用のCOMPUTERテストケーブルが、6~7はオシロスコープが必要な
為、ここでは1~4のみ書くことにします。
■1:LCD&LED Test
テストモードに入った直後の状態です。全ドットがムラ・欠けなく点灯して
いるかをチェックします。ALL/MUTE ボタンを押すごとにコントラストが
変わるので、同様にムラや欠けがないか目視でチェックします。
PREVIEWボタンを押すとLEDが順にひとつずつ点灯し、最後に全点灯する
ので、点灯しないLEDがない事をチェックします。EFXインジケータのLED
のみ2色になっていて、緑→赤→橙(緑・赤の同時点灯)と色が変化します。
LCD&LED Testの様子
■2:Memory Test
内部メモリの良否、通信状態などをチェックします。
メモリテストに移ると自動的にテスト開始、数秒後に結果が表示されます。
Memory Testの様子
良好ならば写真のように OK と表示され、内部のいずれかのメモリ、または
メモリとの通信状態に問題がある場合は NG と表示され、左側の不良個所が
点滅します。
8M:PROM (IC26)
L12:LSP (IC28)
wAB:波形ROM (IC20~24)
S12:SRAM (IC17/18)
D12:DRAM (IC30/31)
■3:Switch Test
発売から20年以上経つ88Proが一番引っかかりやすいのが、このテストでは
ないでしょうか。パネル上の、電源スイッチ以外のボタンの良否をチェック
するテストです。
順番は決まっていないので、パネル上のボタンをひとつずつ押して行きます。
押したボタンの名前が表示され下にドットが点灯すれば、そのボタンは正常
に機能している事になります。
全てのボタンが正常であれば、 OK 表示が出ます。
スイッチの接点が劣化し接触抵抗が高くなって来ると、グイグイ押さないと
ボタンが効かなくなります。その場合は、内部のタクトスイッチを交換する
必要がありますね。
以下の記事で、タクトスイッチの交換作業を行っています。当然ですがある
程度はハンダ付けの技術が必要になって来ます。
SC-88Pro のタクトスイッチを全交換するよー
Switch Testの様子
■4:MIDI & Battery Test
メモリの設定を保持する内蔵バッテリの電圧と、MIDI端子の良否をチェック
するテストです。MIDI端子のテストはMIDIケーブルが1本必要です。
MIDI & Battery Testの様子 (ここではMIDI端子のチェックは行っていない
ので、ドット部分に OK 表示が出ていません)
テストに入るとすぐバッテリ電圧がチェックされ、現在の電圧と良否が表示
されます。2.8~3.5V(ボルト)でOK診断となり、範囲を外れていればNG。
MIDIテストは背面のMIDI OUT端子にMIDIケーブルを接続し、もう一方を
・背面のMIDI IN Aに接続する
・背面のMIDI IN Bに接続する
・前面のMIDI IN Bに接続する
でテストします。全て良であれば、ドット部分に大きく OK 表示が出ます。
全て接続しても OK 表示が出ない場合は、一応MIDIケーブルの断線を疑って
ケーブルを別のものに交換して再度チェックします。それでも OK が出ない
場合は、いずれかのMIDI端子が不良になっている可能性があります。
このようにして、88Proの健康診断を行う事が出来ます。
テストモードを抜けるには、一旦電源をOFFにして下さい。
まぁ実際の所、既に88ProはRolandでも修理を受け付けていないので、故障
個所が発覚した所でどうしようもないのですが😅
ですが、内蔵バッテリは頑張れば自分で交換が可能ですので、電圧チェック
くらいは定期的にやった方が良さそうですね。
■SC-88Pro 内蔵バッテリの交換について
88Proは内部基板が2階建てになっていて、ケースを開けた時に見える基板が
デジタル側、そのデジタル基板を外すと奥に見えるのが電源/アナログ側の
基板になっています。
内蔵メモリのバックアップ電池はデジタル側の基板に取り付けられており、
基板を外して裏返すと、コンピュータ端子のすぐ後ろあたりにあります。
!必ずACプラグをコンセントから抜いてから作業を行ってください!
でないと感電しちゃうかもよ~。
バッテリ交換はメモリ内容が消えますので、事前にバルク送信等で必要に応じ
バックアップを取って下さい。
ユーザデータはバルクダンプ機能を使って、外部のシーケンサ等に保存して
おきます。
1:ALL ボタンを押して ALL ランプを点灯させる
2:INSTRUMENT ◀ ・ ▶ を同時押し
3:ディスプレイに Dump all, Sure? と表示される
4:シーケンサを録音、またはエクスクルーシブ受信状態にする
5:ALL ボタンを押すとバルクダンプ送信が開始される
※バルクダンプの送出対象はユーザ音色やユーザドラム、ユーザEFX等の
設定のみで、システムの設定は含まれません。
バックアップ電池の位置
※この写真ではコンデンサ交換済み、コンピュータ端子を撤去済みで無改造
の物とは若干異なるのでご注意。
ソケットに入っているので、黄色矢印辺りに小さなマイナスドライバなどを
突っ込んで右方向に押してやると、簡単に取り出す事が出来ます。無理矢理
取り出そうとしてソケットを破損したり、電極を折損しないよう注意。
使用電池はおなじみCR2032なので、バッテリテストで電圧が低くエラーの
表示が出たら、市販のものを購入して交換しましょう。
+・-ドライバ各1本で出来る簡単なお仕事です。
基板下部から出ている配線をブチ切らないように気をつけましょう。安全の
ため、全てのコネクタを抜いてデジタル側基板だけ独立させた状態の方が、
作業しやすいです。元に戻す時は、前面のMIDI IN Bに繋がるCN2の接続を
忘れないようにしましょう。
バッテリを交換した際は念のため、内部メモリを初期化しておきましょう。
初期化の手順は、
1:電源ON
2:最下段の SELECT を押したまま
3:INSTRUMENT ◀ ・ ▶ を同時押し
するとLCDに Init all, Sure? と表示されるので、ALL ボタンを押下すれば
ファクトリーセットアップが実行され、初期状態に戻ります。その後で保存
したバルクデータを88Proに送信してやれば、ユーザデータを復旧させる事
が出来ます。
おまけ記事:基板上のLSI・IC一覧などは、こちらの記事に記載しています。
※2024/11/03 追記
■CPU・サブCPUのバージョンナンバー確認
1:電源OFF
2:パネルのMIDI CH ◀ ・ ▶ボタンを押下したまま
3:電源ON
4:オープニングが表示されている間にVOLUMEつまみを押す(PREVIEW)
操作が成功すると、各バージョンナンバーが一定時間表示された後、通常の
画面に戻ります。
これは確認が出来るというだけです。初期モデルにはバグが含まれた個体が
あります。通常は背面に貼られた丸いシールで判別できますが、そのシール
がない場合には、この方法でバージョンが確認できます。
ちなみに自分の88Proは初期Ver.です。
ありがとう
ご来訪&コメントありがとうございます。
お役に立てたようで良かったです🙂