寒中全裸DTMが捗っておられる事と、お慶び申し上げます。
先日久々に SC-88Pro の電源を入れた所、パネルの各ボタンが幾つか効き
づらくなっておりました。なので、この機会に全交換してしまいましょう。
Roland のこの手の音源は何かとA+Bのようなボタン同時押し操作が多く、
タクトスイッチが劣化して接触抵抗が増えると、この同時押しがなかなか
上手く行かなくてイライラするものです。
ご存じの方も多いとは思いますが、SC-88Pro 等この手の音源はボタンで
パラメータを変更する時、素早く増やしたい時は>を押したまま<も押す、
素早く減らしたい時は<を押したまま>も押すという操作をする事で一気に
変化させる事が出来ます。
しかしボタンが効かないと、この操作も上手く出来ないんですよね…。
※ちなみに<と>を同時に押すと、全chがレベルメータ部分にバーグラフで
表示されます。
トップカバーを開けたら、天面と底面にある4本の皿ネジを外します。
MIDI IN B端子の後ろにあるネジ1本も忘れずに外します。
するとフロントパネルが外れるので、液晶のフラットケーブルに注意しつつ
スイッチ基板を外します。ネジ7本で留まっています。
このネジは締める時に強く締め過ぎないようにして下さい。割とあっさりと
ネジ山をナメます。
えぇ、1本ナメました。
基板を取り出しました。
ALL、MUTE、88MAP、55MAP の4つはLED付きのタクトスイッチですが、
導光用に半透明のボタンが被せてあります。これを取り外し、無くさない様
保管しておきます。
基板から全てのタクトスイッチを取り除きますが、初回の交換では、タクト
スイッチの足が曲げられているので、取り除くのがとても大変です。しかも
ここはパターンが剥がれ易いので手早く作業しましょう。
自分はこれが2回目の交換で、今後の交換も考えてスイッチの足を曲げずに
ハンダ付けしておいたので外すのは楽でした。まぁそれでも2ヶ所パターン
剥がれたんですが。前回の交換から多分10年以上は経っているかな。
余談ですが、この形状のスイッチの名称は、正しくは タクタイルスイッチ
で、タクトスイッチ という名称は ALPS ALPINE の登録商標です。
まぁ何でもかんでもタクトスイッチと呼んでしまう訳ですが。
全て撤去し終わりました。外したスイッチのON抵抗を測ってみると殆どが
MΩ単位、最も低い物でも数kΩ。これでは効きませんね~。
ある程度の電流が流れる部分であれば接点の自浄作用も期待できるのですが、
微弱な電流しか流れない接点では劣化して行く一方です。
誰かこの基板を外注に出せるようにCADでデータ作ってくれないかな…。
これから新しいタクトスイッチを付けていく訳ですが、どんな物でも使える
という訳ではありません。
・トッププッシュ
・タテヨコ6mm
・ステム長5mm
・2本足スルーホール用ラジアルタイプ
特にステム長 5mm という規格が大切です。
ステム長が短いと取り付けた時にボタンがズボッと沈み込んでしまうし、
長いとボタンが常に押されたままの状態になってしまいます。
取り敢えず必要数スイッチを揃えました。普通のタクトスイッチが24個と、
LED付きが4個です。
LED付きのスイッチですが、こちらは多分ステム長7mmの物だと思います。
サーセン、サイズ測り忘れました。ただ「これで問題なく付くだろう」と思って
付けた 8×8×8(mm) のスイッチでは基板が浮き上がってしまい、無理やり
ネジを締めるとボタンが押されっぱなしになってしまうので、これでは合い
ませんでした。
サービスマニュアルによると純正品の型番は SKHQFR002A です。名称から
察するに ALPS 製だと思うのですが、電即納でも取り扱いがないので、既に
廃番になっているようです。そりゃそうですよね…27年も前の音源ですし。
なので、互換品を探すのは大変そうです。
LEDは元々オレンジの物を白にしていましたが、今回は緑を使いましょう。
これも昔ながらの黄緑LEDなら使わない所でしたが、このLEDは綺麗な緑で
光ってくれるので、これを採用。
個人的な感覚ですが、黄緑色って何か汚い感じしません?
ただ、前述の通りこのスイッチでは取り付けが出来なかった為、LEDだけを
移植し、スイッチ自体は元々付いていた物を再利用します。
スイッチを分解して中の接点とバネをピンセットの先で磨いて、接触抵抗を
回復させました。バネが小さすぎて目が痛くなる作業です。でも分解できる
スイッチで良かった…。
まぁ実の所、ここで接点を磨いたり中の小さなバネ接点を飛ばしてしまって
探し回ったり、上記のLEDを移植したりと何やらかんやらすったもんだして
2時間くらいかかった訳ですが。
LED付きスイッチは、下が A (アノード)、上が K (カソード) です。
各タクトスイッチは、底面が基板と密接するように押さえながらハンダ付け
します。基板から浮いていると押したとき足に力がかかるので、パターンが
剥がれてしまいます。
こういうことです。
全てハンダ付けし終わりました。
ちなみに SELECT ボタン右のLED 3個が一番下だけ純正のオレンジのままに
なっていますが、これは ATTACK / DECAY / RELEASE のモードを選択して
いる事を分かり易くする為で、上2個は青色LEDです。
さて、これで交換作業が終了したので、元通りに組み立て直します。
このスイッチに被せる半透明カバーの取り付けをお忘れなく。
カバーは純正スイッチの場合、四角部分の幅広側が横になる向きで付けます。
つまりこの写真では、被せ方が90° 間違っています(笑)。後ほど正しく付け
なおしました。
電源パイルダーオン!!
うん、問題なさそうですね。ではテストモードに入って、全ボタンとLEDの
動作確認をしましょうか。88Pro のテストモードへの入り方はこちら。
テスト3 Switch Test に入り、ボタンをひとつずつ押して行きます。
全て問題なく押下が認識され、OK 表示が出ました。LEDの点灯テストでも、
全LEDが点灯しているので確認作業も完了です。
緑LEDが若干暗いですね。電圧は恐らく5Vだと思いますが、電流制限抵抗が
470Ωなので、11mAくらいしか流れません。
もうちょっと明るく光ってくれたら良かったのだけど。
で、今回の失敗談。
まずLEDのない方のタクトスイッチを今回適当に買ったのですが、押す力が
強いタイプでした。感覚的には今までのスイッチの倍くらいの力で押さない
と、カチカチ言いません。
デジタル計り上にスイッチを「カチッ」と鳴るまで押し付けて測ってみると、
今までのスイッチは100gほどなのに対し、今回付けたスイッチは300g位で
押さないとONになりません。
まぁ操作は困難ではありませんが、もう少し軽い力で押せるスイッチを選ぶ
べきでしたね。こんなの100個も買っちゃってどうしよう…。
それとLED付きスイッチのサイズ違い。手持ちの物があったので、前回交換
した時もこれを使ったのだろうと思い込んでいました。しかし実際には少し
大きかったので、やむなく再利用。事前に寸法は測っておくべきでした。
それから、半透明ボタンのLEDに緑を使った点。
点灯させてみて思ったのですが…青やらオレンジやら緑やら何だか見た目が
だいぶ下品になりました(笑)。
まぁとにかく、これでまた SC-88Pro を気持ちよく操作できる~。

