2024年03月28日

ピッチベンドによるフォルマント変化

そろそろ3月も終わりますが、DTMerの皆さまにおかれましては全裸花見
DTMが捗っておられる事とお慶び申し上げます。

今回は珍しくDTMに関する小ネタをちょこっと。


だいぶ前の記事になりますが、良く使われる打ち込みの技 という記事の
中で、「ピッチベンドで音色変化」という技法を紹介しました。

さらっと抜粋しますと、
方法は簡単で、パートのノート#を1オクターブ下げ、その分をベンドレンジ±12に
設定したピッチベンドで上げる(+8,191)方法です。
もちろん逆にノート#を1オクターブ上げ、ピッチベンドで下げる(-8,192)方法も
あり、どちらも元の音とは少し違った変化を得る事が出来ます。

という記事です。

今回はそれをより詳しく書いてみますか。まずは実際に音を聴いて頂くのが
分かりやすいですね。


以下の音声ファイルはPC#:81 Saw Waveで C のコードを3種録音したもの。
倍音を多く含んだ音の方が分かりやすいので、Saw Waveを使っています。

最初の C はC4,E4,G4。次の C はC3,E3,G3をピッチベンドで+8,191した
もの、最後の C は C5,E5,G5をピッチベンドで-8,192したものです。

※一応音量注意


全て同じ音域の C コードに聞こえますが、フィルタ等はいじっていません。
MSGSを使って簡単に録ったので、真ん中の+8,191したものは随分と音痴に
聞こえますが、そこはおいといて(笑)。

どうでしょう。普通にC4,E4,G4と弾いた音に比べてC3,E3,G3 を+8,191
した音は明るく煌びやかな音になり、C5,E5,G5を-8,192した音はやや籠り
丸い音に聞こえますね~。


これをWaveIlluminatorで再生して、波形を見てみましょう。
上から通常演奏、+8,191、-8,192です。

CmajPB3type.png

波形の黄色枠の中に注目してください。

一番上の通常演奏を基準として比べると、-8,192したものは高域5kHz~
10kHz辺りまでの成分が増えており、+8,191したものは同じ周波数帯で
少し減衰しています。


より細かくWaveSpectraで波形を見てみます。

音色はSaw Waveですが、以下はコードではなくC4単音での波形です。上が
普通にC4を鳴らした波形、真ん中がC3を鳴らしてピッチベンドで+8,191、
下がC5を鳴らしてピッチベンドで-8,192したものです。

NoteC4PB0.png

NoteC3PB8191.png

NoteC5PB-8192.png

これはもう一目瞭然ですね。一番上の普通に弾いた C4 に比べて+8,191
では高音成分が増えており、下の-8,192では高音成分が減り、変な谷間も
出来ています。


通常PCM音源はサンプリングした音を鳴らしているのですが、1つの波形で
全音域に使おうとすると音程が上がる(下がる)程、元の波形からかけ離れた
音になっていってしまいます。

そこで通常はマルチポイント・サンプリングという方法が使われています。
ひとつの鍵盤につき波形を1つ用意していたのでは、データ量が莫大になり
ROMに収め切れないので、1オクターブ毎やいくつかの鍵盤を1つの波形で
賄うことで、サンプルの数を減らしています。

安いキーボード等ではこのサンプリングが割と雑に行われているので、ある
鍵盤と隣の鍵盤で同じ音色なのに鳴り方が違う、なんて事も起こりますが、
これはまさにフォルマント変化が起こってしまっている為です。


ピッチベンドでオクターブ上げた時は波形を倍速で再生、オクターブ下げた
時は波形を半分の速度で再生している事になるので、C4をピッチベンドで
上げればC5に聞こえ、下げればC3に聞こえます。
ピッチベンドでの音程変化は、波形の再生速度を変化させているに過ぎず、
音に含まれている周波数全てを単純に平行移動させているだけです。


なので、C3をピッチベンドで上げると、含まれている周波数成分が全体的に
1オクターブ高い側へとシフトするので、高音成分が増えて明るい音になり、
C5をピッチベンドで下げると含まれている周波数成分が全体的に1オクターブ
低い側へシフトするので、高音成分が減り籠った音になるという訳です。


曲の中で単純にちょっと音の質感を変えたいと言った場合には、結構使える
と思います。ただ、ギターのタッピングなどを再現していて離れた音程へと
ピッチベンドで飛ばすと、このようなフォルマント変化が起きてしまうので、
音の質感が変わってしまいます。



お解かりいただけるだろうか…。
う~ん…頭では分かっていても、言葉で説明するのはなかなか難しいですね。
良い例えが見つからない。

尚、元の記事でも言及していますが、これはPCM音源に限って出来る技法で
あり、PCM以外の音源(特にアナログシンセ)では不可能ですのでご注意を。



posted by ゆう at 2024年03月28日| Comment(0) | 打ち込みテク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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