さて、前編・後編と分けたは良いものの、前編以外に一体何があるんだ?と
考えてみると、何だか必要な事は前編に書いてしまった気がして、後編には
何を書けば良いのだろう?と若干困っておりますが…。
とりあえず、
前編 で書いたギター全般に関する解説を前提として、補足という
形で楽器別に書いて行こうと思います。
単純なコード弾きのバッキングパターン等では1つのMIDI Ch.で済みますが、
ギターは各弦個別にチョーキングなどが出来るため、本格的にギター特有の
奏法をシミュレートする場合には複数MIDI Ch.、それこそ1本の弦に対し
1つのMIDI Ch.を割り当てるなどしないと難しいです。
1本のギターの為に6つのMIDI Ch.を使うというのは、音源を単体で使う上で
ちょっと厳しい条件なので、主に鳴らすトラックと、チョーキングなど他の
弦に影響させたくないトラックを1~2つくらい用意すれば良いでしょう。
それから、スライド奏法について一点補足を。
スライドというのは、あるフレットを押さえたまま左手を別のあるフレット
までスッと移動させ、ピッキングせず音程を変える奏法で、以前の記事
「
ピッチベンドの使い方 」で「例としてC→DやD→Cなど2フレット移動する
時、間に必ずC#の音が入っているので、
・0 → +683 → +1,366 または 0 → -683 → -1,366
・+1,366 → +683 → 0 または -1,366 → -683 → 0
とします。」と触れました。
これはこれで間違ってはいないのですが、ピッチベンドでただピッチを変更
しているだけ
なので、アタックがありません。しかし実際のギターはスライドすると、弦
がフレットに当たった時に、ピッキングほど強くはないものの多少アタック
感が出ます。このスライド時のアタック感を表現するだけでも、グッと生っ
ぽいニュアンスが出ます。
そこで、主に聞こえるギターはピッチベンドで変化させ、その変化と同じ
タイミングで別のトラックに普通にノートを置き(上の例ではC、C#、D)、
薄く重ねるなどすると良いでしょう。つまり、ピッチベンド変化で欠けて
いる「弦がフレットに当たる瞬間のわずかなアタック感」を他のトラックで
隠し味的に補ってやる訳ですね。今のシンセや音源は、元々こういう音色が
収録されていて羨ましい…特にJUPITER-80のフラメンコギターなんか絶品。
■PC#25:Nylon-Str.Gt アコースティックギター(ナイロン弦) その名の通り、ナイロン弦を張ったギターの事です。クラシックギターと
呼ばれますが、その昔、ナイロンという素材がなかった頃は動物(主に羊)の
腸を加工して張っていた事から、ガットギターとも呼ばれます。
88ProのBank 0にあるナイロンギターはベロシティによって柔らかい音から
硬い音まで幅広く出せるので、強弱のメリハリをしっかり付けましょう。
カットオフ周波数を-10(54)くらいに設定して弱いベロシティで演奏すると、
ウクレレの代わりに使えます。というかむしろこの方がBank 8:Ukuleleより
ウクレレっぽい。まぁ、ウクレレ自体もナイロン弦なので当然と言えば当然
なのですが。
ウクレレの基本チューニングは4弦からソドミラ(GCEA)となっています(ソは
オクターブ下ではありません)。弦が4本で最低音はC4になるので、コードを
演奏する時は4和音で、C4以下の音を鳴らさないように気を付けましょう。
ギター・ウクレレどちらにも言える事ですが、右手小指側の側面を弦に当てた
まま弾いたり、左手をフレットから浮かせて弦に触れたまま弾く事で、
「チャッ」と歯切れの良いミュートを入れる事が多いです。この場合はゲート
タイムを極端に短くして対応します。ミュートも、発音タイミングずらしを
忘れずに入れましょう。
■PC#26:Steel-Str.Gt アコースティックギター(スチール弦) フォークギターとも呼ばれます。鉄弦なので硬く、倍音を多く含んだ音が
出ます。その為フィルタとの相性も良いので、丸く厚い音から鋭く尖った音、
レゾナンスを効かせてワウ効果を得るなど幅広い音作りが出来ます。
ベロシティに対する変化がナイロンギターほど強くはないので、ソロなど
前面に出す時はフィルタの使い方が重要になります。積極的にフィルタを
いじって行きましょう。
アタックもナイロンギターに比べると鋭いので、ストロークのコード弾き
では発音タイミングずらしが明瞭に聞こえます。
逆に言うと、明瞭に聞こえるぶん手を抜くとすぐにバレます(笑)。
6弦解放(E2)あたりが若干痩せぎみの音色なので、4・5・6の低音弦を多用
する曲の場合は88Mapの Steel Gt.2 の方が合うかも知れません。
マンドリンは同じくスチール弦の楽器ですが、音域はギターよりずっと狭く
最低音はG3になります。またディケイが短いので、長い音を演奏する時は
必然的に同じ音を小刻みに鳴らすトレモロ奏法を行う事になります。
88Proには Bank 18:MandolinTrem という音色が収録されていて、この音色
は鍵盤を離した時にも同じ音が鳴るようになっているので、トレモロを弾く
時に鍵盤を押す回数が半分で済むという優れモノです(笑)。
トレモロを使ったソロを演奏する時は、出だしを弱くゆったりと、ベロシ
ティが山なりになるようにすると良いでしょう。
↑マンドリンのベロシティ例
■PC#27:Jazz Gt. ジャズギター 88Proのジャズギターは若干硬い気がするので、カットオフ周波数を-20(44)
程度まで下げた方が使い易いです。往年の名機JC-120っぽくEFXのStereo
Chorusをかけるのも良いでしょう。
素早い駆け上がり/下がりフレーズは、全体をレガートっぽく鳴らすより
ゲートタイムを短めにして、所々でベロシティを小さくする「やや空振りっ
ぽい音」を入れるのがコツです。
Bank 8:Pedal Steelは、まぁこれでも使えない事もないのですが、個人的には
後述するTC FrontPick を使った方が合っている気がします。
ペダルスチールギターは基本ボトルネックを使って演奏されるので、ピッチ
ベンドを多用します。また、個別の弦だけに対してボトルネックやペダルを
踏む事でピッチを上げ下げするので、複数トラックに割り振らないと再現が
難しいです。
■PC#28:Clean Gt. エレキギター 88Proは、エレキギターのクリーントーンが豊富に収録されているので、
シーンごとに使い分けがしやすいですね。とは言っても、Bank 0 の音色は
ペラペラすぎて使い道がないので、通常演奏はBank 1:Clean Half、スピード
感が必要なカッティングなどの時はBank 2/3:Open Hard 1/2 など、 割と
使う音色が固定されるような気がします。
特にフロント・シングルピックアップっぽいOpen Hard 2は凄く歯切れが
良いですね。自分はカッティングのパターンにこればっか使ってます(笑)。
また、前述のJC-120を通したコーラスがかかった音色も予め収録されている
ので、EFXが空いていない時は重宝します。
Bank 16~19の頭にTCがついた音色はTeleCaster系の音色ですが、前後ピック
アップの違いがしっかり出ているので、ジャズ系やペダルスチールギターの
代わりに使えます。EFXで軽くクランチさせても良いでしょう。
但し歪ませ方によってはロングトーン時「じゃ────ぅわわわわわわん」と
波形のループポイントに起因するうねりが入ってしまい、しかも鍵盤ごとに
鳴る波形が切り替わるので、ある鍵盤ではうねりが遅く、半音下がると
うねりが速くなるなどの現象が発生します。このうねりは消せないので、気に
なる場合はEFXのDriveの値を下げるしかありません。
■PC#29:Muted Gt. ミュートギター 弦を小指下の側面で押さえて、弦の振動を弱める奏法がミュートですが、
この音色は元々のアタックが若干遅れ気味なので、特にリズムを刻ませる
場合はデータ上で少し発音タイミングを全体的に早めないと、ギターだけ
ノリ遅れているように聞こえます。これはEGを変化させても変わりません。
Bank 1のMuted Dis.Gtはかなり低音が出るので、E2~E3辺りはEQで低音を
カットするか、ディケイの値を-30(34)しないとベースの邪魔になるかも
知れません。Bank 16:Funk Gt.2はベロシティによってミュートとファンク
系音色を使い分けられるのですが、ベロシティスイッチが極端すぎるので
使いづらいです。
■PC#30:Overdrive Gt オーバードライブギター ■PC#31:Distortion Gt ディストーションギター SC-55の頃から比べるとどちらも格段に質が良くなってはいますが、やっぱり
時代を感じさせる音ですね~。88Proの演奏が今ひとつ迫力に欠けるのは、
音色の波形に高音・低音成分が不足しているからで、特に歪みギターは音が
安っぽいです(More Drive、Dist. Gt2: などはまだマシな方ですが…)。
細かなニュアンスの表現や、わずかに歪むような感じを出したければクリーン
トーンを使う所ですが、パワーコード(一度+五度)でガンガン弾くような時は、
思い切って元々歪みギターとして収録されているこれらの音色を、そのまま
EFXのドライブやディストーションにブチ込んだ方が、攻撃的な音を作れます。
もちろんメロディ弾きにも使えますが、そのままだとかなり高域のノイズが
目立つので、EFXに通す場合はEFXのHi Gainを下げ、それでも足りない場合は
カットオフ周波数を下げると、他の音と馴染みやすいです。
※88Proは、EFXの質はもの凄く高いのですが、 収録されている音色はそれほどでもないので、クリーントーンの音色を歪み系 EFXに通したとしても、どうやっても嘘臭さが消えないんですよね…。 EFXの59番にOD1 / OD2 というエフェクタがあります。これは名前こそODに
なっていますが、初期設定では1がオーバードライブ、2がディストーションに
なっており、それぞれOD/Distを選んで使う事が出来ます。
左にオーバードライブ、右にディストーションなどのツインギター構成の場合
はこのエフェクタを使う事で2つのパートを同時に歪ませる事が出来ますが、
実際に鳴っているパートのCC#10:Panの値をOD1=0、OD2=127と振り切ら
ないと、音がゴチャ混ぜになって汚く聞こえたり、あらぬ定位から音が聞こえ
たりするので注意が必要です。
■PC#32:Gt.Harmonics ギターハーモニクス このハーモニクス音は、チューニングの時などに行う「フレットの上で弦に
軽く触れて鳴らす音」なので、曲の中ではあんまり使い道ないですね。
Bank 8:Gt.Feedback2・Bank 16:Ac.Gt.Harmnx・Bank 24:E.Bass Harm.
あたりは、曲の中でも効果音として結構使えます。
ギター奏法に「ピッキング・ハーモニクス」(以下 P.H)というものがあります。
ピックで弦をはじいた時に、そのピックを持つ親指の側面が弦に一瞬接する
ようにすると、その音程の倍音を強調する事が出来ます。
ギターの演奏を聴いていると、所々で裏返ったような高い音が出ていますね。
あれがP.Hで、リズムやソロの中で使うととても効果的な奏法です。
自分はこのP.Hが大好物です(笑)。歪み系ギターのソロなどでは大抵入れて
いますが、このPC#32ハーモニクスの音色は使っていません(奏法が違うので
当然ですが…)。
P.H表現では、例えばG3の音をP.H化したければそのままの音色で2オクターブ
上のG5や、それに5度を加えたD6など高い音を鳴らし、目立たせる為にピッチ
ベンドでちょっと大袈裟なビブラートを加えると、それっぽくなります。
但し、やりすぎると「いかにも」な感じがして逆効果になりがちですので、
多用するのは避けましょう(笑)。
VIDEO ↑やりすぎの例(メトロイド アレンジバージョン Kraid's Hideout)
次は何を書こうかな…オルガンとか?何か考えておこう。